【起立性調節障害(OD)とは?|思春期に多い”見えにくい病気”の理解と対応法】
はじめに
起立性調節障害(OD)は、自律神経のバランスが乱れることで、血圧や心拍数の調整がうまくいかなくなり、立ち上がったときに脳への血流が減少して様々な症状が出る病気です。
特に思春期の子どもに多く、中学生の約10%が該当すると言われています。
この記事では、ODの主な症状や原因、診断方法、効果的な治療・対応法を詳しく解説します。
起立性調節障害の主な症状とは?

ODは午前中に症状が強く現れ、午後や夜には軽快する傾向があります。代表的な症状は以下のとおりです:
- 立ちくらみ・めまい・失神
- 朝起きられない、強い倦怠感、頭痛や胸痛
- 動悸や息切れ、食欲不振
- 昼夜逆転、夜に眠れない
これらの症状により、学校に行けない、起き上がれないなど、日常生活に支障をきたすケースもあります。
起立性調節障害の原因と発症メカニズム
ODの原因は自律神経の働きの乱れです。立ち上がった際、本来なら交感神経が働いて血圧を保つはずですが、その調整がうまくいかず、脳への血流が減ることで不調が出ます。
主な要因には以下が挙げられます:
- 思春期のホルモン変化
- ストレスや生活習慣の乱れ
- 遺伝的素因
- 筋力低下、脱水、気圧や季節の変化
診断方法:どこでどう診てもらえる?
ODの診断は主に問診と”新起立試験”(横になった状態から立ち上がり、血圧や心拍数の変化を測定)で行われます。加えて、他の疾患(貧血や心臓病など)を除外するための検査も必要です。小児科や心療内科などで対応してもらえます。
起立性調節障害(OD)セルフチェックリスト
「もしかして…?」と思ったら、以下の項目に該当するかチェックしてみましょう。あてはまる項目が多いほど、起立性調節障害の可能性があります。
【朝の状態】
- 朝起きるのが極端に辛く、ベッドから出られない
- 目が覚めても体が重く、動く気力が出ない
- 朝の頭痛・腹痛・吐き気が頻繁にある
- 午前中に立ちくらみやめまいがよく起こる
【日中の変化】
- 午後や夕方になると体調が比較的よくなる
- 学校や仕事のある日は特に体調が悪化する
- 通学・通勤できず、欠席や遅刻が続いている
【身体のサイン】
- 立ち上がるとふらついたり気分が悪くなる
- 動悸や息切れを感じることが多い
- 少し動いただけで極度の疲労感がある
【生活リズム】
- 夜になると元気が出て、つい夜更かししてしまう
- 昼夜逆転の生活になっている
- 日によって症状のばらつきが大きい
【気持ちの面】
- 「怠けているのでは」と周囲に誤解されるのがつらい
- 本当はやりたいのに「体がついてこない」と感じる
- 自分でも「サボってるのかな?」と不安になる
チェック結果の目安
- ✅ 8項目以上該当する場合
→ 起立性調節障害の可能性があります。医療機関(小児科・心療内科・思春期外来など)への相談をおすすめします。 - ✅ 4〜7項目該当する場合
→ 生活習慣の見直しや体調の記録を取りながら、様子を見ましょう。家族や先生と相談してもよいかもしれません。 - ✅ 1〜3項目該当する場合
→ 一時的な疲労や生活リズムの乱れかもしれません。規則正しい生活や水分補給を意識しましょう。
起立性調節障害の治療と対応法
A. 非薬物療法(基本)
- 生活リズムの見直し:早寝早起きを心がけ、朝には2500ルクス以上の強い光を浴びる(光療法)
- 水分・塩分の補給:1日1.5〜2Lの水分と10g程度の塩分を摂取
- 適度な運動:散歩やスクワットなどで下肢筋力をアップ
- 立ち上がりの工夫:急に起き上がらず、頭を下にして徐々に体を起こす
- 睡眠習慣の改善:夜更かしを避け、就寝前のスマホは控える
B. 薬物療法(医師の判断で)
必要に応じて以下の薬が処方されます:
- ミドドリン(昇圧剤)
- アメジニウム、心拍調整薬
- 漢方薬(半夏白朮天麻湯・五苓散など)
予後と今後の見通し
軽度のODなら数か月で改善することが多いですが、中等症以上では長期化することも。ただし、思春期が終わる16~17歳以降には、約90%が自然回復します。成人後も残るケースもありますが、焦らず付き合っていくことが大切です。
起立性調節障害(OD)と「怠け」の違い
| OD(起立性調節障害) | 怠け |
|---|---|
| 自律神経の乱れによる、明確な身体症状(めまい、頭痛、動悸など)がある。 | 特定の身体的症状はなく、活動へのモチベーションが湧かない。 |
| OD(起立性調節障害) | 怠け |
|---|---|
| 朝~午前中が特に悪化し、午後から夜にかけて改善する傾向がある。 | 時間帯に明確なパターンはなく、興味のあることなら朝でも元気に動ける。 |
| OD(起立性調節障害) | 怠け |
|---|---|
| 「動きたいのに動けない」「やりたくてもできない」といった葛藤や罪悪感を強く感じる。 | 「面倒」「やりたくない」「やる気がない」などの心理的抵抗があるが、罪悪感や焦りは少ない。 |
| OD(起立性調節障害) | 怠け |
|---|---|
| 環境や条件が変わっても一定の症状(立ちくらみ、倦怠感)が現れやすい。 | 条件や気分次第で症状が現れたり消えたりする。 |
| OD(起立性調節障害) | 怠け |
|---|---|
| 他者が理解を示しても、すぐに症状が改善するわけではないが、心理的な負担は軽減される。 | 周囲の理解やサポートにより容易に改善したり、気持ちが前向きになる傾向がある。 |
境界線を見極めるポイント(まとめ)
- 本人の「やりたいのにできない」という意志があるかどうか
- 身体症状の有無・一貫性があるかどうか
- 特に午前中に症状が悪化するパターンがあるかどうか
これらを基準にして見分けることができます。
周囲の人に求められる姿勢
起立性調節障害は周囲から「怠け」「甘え」と誤解されがちですが、身体的根拠を持ったれっきとした疾患です。本人自身が強い葛藤を抱えていることも多いため、周囲の人は症状を理解し、「責めない」「急かさない」「本人のペースを尊重する」という姿勢でサポートすることが重要です。
ODは”怠け”ではない!誤解されがちな点に注意
ODは外見では分かりづらいため、「怠けている」「サボっている」と誤解されがちです。
しかし、本人は「動きたいのに動けない」という葛藤や罪悪感に苦しんでいます。
このような心理的な特徴は、ただの怠けとは根本的に異なります。
家族・学校・支援者へ
起立性調節障害を持つ子どもは、家庭でも学校でも誤解を受けがちです。
だからこそ、大人がこの病気を正しく理解し、責めず・急かさず・本人のペースを尊重するサポートが重要です。
保健室対応や時差登校、通院の同行など、小さな配慮が大きな支えになります。
まずは知ることから
起立性調節障害は、早期の理解と対応で改善が期待できる疾患です。
「怠け」との境界線に悩んでいる方も、まずは身体症状や日内変動パターンを観察し、必要に応じて専門機関へ相談してください。
この情報が、本人やご家族、教育関係者の助けになりますように。

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