
1: HSPとINFJの基本理解
1-1: HSPとは何か?その特徴とタイプ
HSP(Highly Sensitive Person)とは、一般的に「とても感受性が高く、繊細な気質を持つ人」のことを指します。心理学者のエレイン・アーロン博士によって提唱されたこの概念は、人口の15〜20%が該当すると言われています。
HSPの主な特徴として、以下の4つの「DOES」があります:
HSPとは
- D(Depth of processing)思考の深さ
一つの出来事をじっくり考え、内面でよく咀嚼する傾向があります。 - O(Overstimulation)刺激に敏感
音や光、人混みなどの刺激に圧倒されやすく、疲れやすいです。 - E(Emotional responsiveness and Empathy)感情の反応の強さと共感力
他人の気持ちに強く共感し、感情を自分のことのように受け取ることがあります。 - S(Sensitivity to Subtleties)些細な違いへの敏感さ
表情や声のトーンなど、微細な変化に気づきやすいです。
また、HSPには「HSS型HSP(刺激追求型HSP)」と「非HSS型HSP(慎重型HSP)」というタイプがあり、同じHSPでも感じ方や行動傾向が異なるのも特徴です。
1-2: INFJとは?性格の特徴と強み
INFJは、MBTI(16タイプ性格診断)の中でも特に「内向的で直感的、思いやり深く、計画的」なタイプです。全人口のわずか1〜2%程度とも言われ、非常に稀少な気質です。
INFJの特徴には以下のようなものがあります:
INFJとは
- 深い共感力と直感
人の感情を敏感に読み取り、言葉にしなくても空気やニュアンスを察するのが得意です。 - ビジョンを持って行動する
表面的なことよりも「本質」や「理想」に向かって動こうとします。 - 静かな情熱家
一見おだやかでも、内側には強い信念や理想を持っています。 - 1対1の深いつながりを好む
大勢の中にいるよりも、少人数や個人的な関係性を大切にします。
INFJは「カウンセラー型」とも呼ばれ、人の悩みに寄り添ったり、問題の本質を見抜いて助言をするのが得意です。繊細で傷つきやすい一方で、強い洞察力と芯の強さも持ち合わせています。
1-3: HSPとINFJの関係性について
HSPとINFJは、非常に親和性が高い特性同士と言えます。実際に、自分がINFJである人の多くがHSP傾向を持っていると感じているようです。
この2つの特性が重なることで、以下のような傾向が見られます:
- 人の感情に敏感で、無意識に気を遣いすぎることがある
- 深く物事を考えすぎて、疲れてしまうことがある
- 他人の期待に応えようとしすぎて、自分を見失いやすい
一方で、これらの特性が活かされると、
- 他者の心に寄り添い、深い信頼関係を築くことができる
- 人の気持ちを言葉にするのが上手く、表現者として力を発揮できる
- 社会に対してポジティブな影響を与えようとする志を持てる
といった強みにもなります。
「繊細であること」は決して欠点ではありません。
むしろ、それを理解し、うまく扱うことができれば、自分らしくしなやかに生きていくための大きな味方になるのです。
2: HSPとINFJのあるある
2-1: 日常生活でのHSPあるある
HSPの人は、日常のちょっとした場面でも他の人より深く感じ取ったり、気にしたりする傾向があります。以下はHSPさんがよく「あるある!」と共感するシーンです:
- カフェや電車など、周囲の音や会話が気になりすぎて疲れる
何気ない雑音や周囲の緊張感を敏感にキャッチしてしまい、頭がいっぱいになることも。 - 人の言葉を深読みしすぎる
「この言い方、何か意図があったのかな…」と考え出すと止まらない。 - 他人の機嫌に振り回されがち
怒っている人や落ち込んでいる人が近くにいると、自分もその感情に引っ張られてしまう。 - 予定が詰まっていると、前日からすでにしんどい
体力的な問題だけでなく、精神的な“準備疲れ”を感じやすいのも特徴。 - 褒められても、なぜか素直に受け取れない
「本当は思ってないかも」と疑ってしまう、謙虚すぎる性格もHSPあるあるです。
こうした日常の「ちょっとしたしんどさ」は、小さな積み重ねで大きなストレスになります。自分で気づいてあげることが、まずは大切です。
2-2: INFJならではのエピソード
INFJの人は、「他の人とはちょっと違う感じ方」をしていることに、早くから気づくことがあります。こんな体験、ありませんか?
- グループの会話が苦手で、1対1の対話に安心感を覚える
大勢の中だと「演じている自分」を感じやすく、エネルギーを消耗しがち。 - 表面的な話より、人生の意味や人の本音について深く話したくなる
「最近どう?」より「どんなふうに生きたい?」という会話がしたくなることも。 - 言葉にならない“空気”を先に察してしまう
まだ誰も気づいていない違和感や、人の感情の波をすぐに感じ取ってしまう。 - 人の相談を受けると、つい真剣に向き合いすぎて疲れる
相手の気持ちを理解しようと深く入り込むため、感情を抱え込んでしまう。
INFJは“人のために尽くす”タイプですが、自分の心を後回しにしやすい傾向もあります。感受性の高さが強みであると同時に、自分自身へのケアがとても大切です。
2-3: 共感力と感情の扱い方
HSPもINFJも、共感力が非常に高いという共通点があります。
そのため、自分と他人の感情の境界線があいまいになりがちです。
- 相手の悲しみに引きずられて、まるで自分が悲しいかのように感じる
- 「助けたい」「分かってあげたい」という気持ちが強くなりすぎて、自分の限界を超えてしまう
- 頭では「私のせいじゃない」と分かっていても、心では「私がもっと○○していれば」と思ってしまう
でも実は、この“共感力”こそが大きな力になることもあるんです。
- 誰かの言葉にできない気持ちを、代わりに言葉にしてあげられる
- 空気を読みながらも、違和感のある空間にそっと優しい言葉を添えられる
- 人の痛みを知っているからこそ、寄り添い方が自然でやさしい
大事なのは、「共感=抱え込む」ではなく、「共感=つながる力」として使っていくこと。
自分の感情と他人の感情を区別する練習をすることで、もっと生きやすくなる第一歩になります。
3: HSPとINFJの診断と理解の深め方
3-1: HSP・INFJの診断方法
HSPやINFJという概念に興味を持っても、「自分が本当に当てはまるのか?」と不安になる人は少なくありません。ここでは、それぞれの診断方法を簡単にご紹介します。
HSPの診断方法
HSPは医療的な「診断名」ではなく、気質の傾向として捉えられています。
以下のようなチェックリストを使って、自己判断するのが一般的です。
- エレイン・アーロン博士の「HSP自己診断テスト」(日本語版もあり)
- HSP研究家・武田友紀さん監修のチェックリストなど
いずれも、以下のような質問が含まれています:
- 人の気分に左右されやすい
- 大きな音や強い匂いが苦手
- 深く考える癖がある
「●個以上当てはまったらHSPの傾向が強い」といった形式で、自分の傾向を把握するヒントになります。
INFJの診断方法
INFJは、MBTI(Myers-Briggs Type Indicator)という性格タイプ診断のひとつです。
- 無料診断:16Personalities(https://www.16personalities.com/ja)など
- 有料・専門家による本格的なMBTI診断もあります
MBTIは4つの軸(外向/内向・感覚/直感・思考/感情・判断/知覚)に基づき、合計16タイプに分類されます。そのなかでもINFJは「内向・直感・感情・判断」の組み合わせ。共感力・理想主義・洞察力の高さが特徴とされています。
3-2: 自己理解を深めるための質問
診断結果はあくまで「入口」です。本当に大切なのは、「自分がどんな人間なのか」を少しずつ知っていくこと。
以下のような“自己問いかけ”を通して、自分自身の理解を深めていきましょう。
自己理解を深める問い
- 私はどんな場面で疲れやすい? どんな時にエネルギーが回復する?
- 人の言葉で一番傷ついた経験は? なぜそれが自分に響いたのか?
- 「自分らしくいられる」って、どういう状態?
- 共感しすぎてつらかったことって? その時どうした?
- 小さい頃からずっと変わらない「私らしさ」は何?
こういった問いを日記やメモで書き出してみることで、診断以上に深い“気づき”が得られることもあります。
3-3: エンパスとしての生き方
HSPやINFJの中には、「エンパス(共感能力が非常に高い人)」という言葉に強く共感する人も多いです。
エンパスとは、他人の感情やエネルギーを自分のことのように感じ取ってしまう人のこと。スピリチュアルな概念として扱われることもありますが、現実的な問題として
- 人混みにいるとすぐに疲れる
- 他人のネガティブな感情に飲み込まれる
- 誰かが落ち込んでいると、自分も暗くなってしまう
といった体験がある場合、「エンパス的な特性」がある可能性があります。
でもこの特性は、コントロールできれば大きな強みです。
「空気を読む」のではなく「空気に飲まれない自分軸を持つ」こと。
自分と他人の感情の境界を意識すること。
これは、トレーニングで少しずつ身につけていくことができます。
「私は繊細すぎるからダメなんだ」と思うのではなく、
「私は感じやすいからこそ、人の力になれるんだ」と捉え直すこと。
それが、HSP・INFJ・エンパスとして生きていくための第一歩です。
4: まとめ

4-1: HSPとINFJが大切にするべきこと
HSPやINFJという気質を持っていると、
どうしても「生きづらさ」や「周囲との違和感」を抱えがちです。
でも、その繊細さや深さは、決して欠点ではありません。
むしろ、この時代に必要とされている“やさしい力”なのだと思います。
だからこそ、HSP・INFJの人たちにとって大切なのは、
「他人に合わせすぎること」よりも、
“自分の心の声”を聴くこと。
- 疲れたら、無理せず休む
- 周囲の期待よりも、自分の違和感を大事にする
- 「わかってほしい」よりも、「まず自分がわかってあげる」
そんなふうに、内側に寄り添う姿勢が、自分らしさを取り戻すカギになります。
4-2: 心を守るためにできること
心を守るというのは、「何もしない」という意味ではありません。
むしろ、“自分にとって必要なもの・不要なもの”を見極める力を育てること。
たとえば:
- 人間関係に“境界線”を引くこと
- 自分を安心させてくれる習慣(音楽、自然、ひとり時間)を持つこと
- 「NO」と言う練習をすること
自分をすり減らすよりも、「自分を満たす」方向に意識を向けていくこと。
それは甘えではなく、HSP・INFJが健やかに生きていくための“戦略”です。
4-3: 次のステップへ進むためのアドバイス
ここまで読んでくれたあなたは、
きっと「少しでも自分を知りたい」「楽になりたい」と思ってくれた方だと思います。
この記事が、そんなあなたの心に
「そうか、これでいいんだ」という小さな安心を届けられていたら嬉しいです。
これからやってみてほしいことは、ほんの小さなことからでOKです:
- 気になる診断テストを受けてみる
- 日記に思ったことを書き出してみる
- 疲れたときに「私はHSPだから、ちょっと敏感すぎただけ」と受け止めてみる
自分を知り、受け入れることが、すべてのスタートです。
あなたの繊細さと優しさが、あなた自身を苦しめるものではなく、
生きる力となりますように。
筆者プロフィール
筆者:衣月(Izuki)
HSP・INFJ気質を持つ繊細な感受性と向き合いながら、自分らしい働き方と心の整え方を探求してきたライター・キャリア支援者。
経営学部卒業後、大手企業にて営業職を経験。心身の不調をきっかけに休職・復職を繰り返す中で、「キャリアを積むこと以上に、自分の気質や心の状態を理解し、整えることの大切さ」に気づく。
現在は、メンタルヘルスや自己理解、再出発のサポートに関する知識・資格(FP、ITパスポート、中小企業診断士ほか)を活かしながら、「自分を知る」「無理なく働く」「繊細さを力に変える」ための情報を発信している。
著書に
『メンタル不調を進化のチャンスに変える』
『うつやHSPのためのアルバイト辞典』
『職場がつらい繊細な人へー毎日しんどいあなたに届けたい仕事術』 など。

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